2019年01月26日

プロ用スチームアイロン修理相談その後

相談元記事>の続き

男の子:ご連絡ありがとうございます。この連休中に荷造りできると思いますので一度検査の方をお願い致します。


墨田のY:初期検査
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修理依頼品が届きました。 きれいな感じです。持ち手の部分がコルクですが、新品のようです。

image_thumb[16]

Made in Italyもかっこいい。
イタリアの高級車を思わせるデザインです。

分解前に通電状態を確認しました。
写真の右が電流計(クランプメーター)です。
クランプメータを使って作動電流を調べれば、ヒーターやサーモスタットの状態を探れます。

image_thumb[6]

スイッチは、アイロンこてと、ボイラーとが別になっています。
ロッカースイッチなのですが、ONになる方向が、日本製とは逆に感じます。
(手前に押すと入る)
それで、ヒーター電流は2.51[A]。100[v]ですので、251ワット[W]ということになります。

image_thumb[12]

ボイラー側は、3.42[A] 流れます。 なるほど。340ワットのヒーター性能なら水を沸騰させ蒸気にするには十分でしょう。
・つまり、これでヒーターは切れていないということがわかります。

次はサーモスタットを調べます。

image_thumb[13]

と、気づくと電流が0になっています。 もうヒーターが切れた?

image_thumb[14]

ボイラーのスイッチは入れたままです。 まだ温まっていないのでは?
これは故障かな?


image

実際に蒸気が出来ているのか。 ちょっと危ないので気を付けながら、注水口を緩めると、「シュー」という音とともに蒸気がでました。

よくわかりません。
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蒸気ができているのに、グリーンランプ(蒸気OK)が点灯せず。
しかし、電流は切れている。 なんかおかしい。
水がないなら点灯するはずの注水ライトも点灯しないし。

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仕切り直し。
とりあえず注水量が少なかったので。 水道水を1リットル入れてやりなおし。

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ボイラーが温まるまで、コテの温度を測定。
最高(MAX)で208度C
正常のようです。

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10分くらいして気づくと、スチームグリーンライトが点灯しています。

スチームも正常に出ました。


スチームが出たので、故障ではない感じです。
移動中の振動で直ったのかもしれません。

ただ、注水ランプが点灯しないのは気になります。
image

注水ランプは、最初の通電で点灯しなければなりません。
なぜなら、タンク内に水がほとんどなかったから。

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分解してみます。 ネジは4本だけでした。 星形で中心に突起のある特殊ねじ。
いままでこの種のネジは単に分解防止だと思っていました。
ですが、作業性が良いなと気づきました。
ネジがはまり込んで、磁石のように付く(はまる)からです。

image

耐熱シリコン電線で、ぐしゃぐしゃした配線。 個々の部品はきれいです。

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ここで不具合発見。

注水ランプ(ネオン管)からの2本の配線を追っていったところ、2本とも同じ端子に挿入されています。
これでは短絡状態ですので、ランプは永遠につきません。
少し悩んで、配線を直しました。 電線は全部で4本。
(端子はロックが掛かる構造なので、ひっぱっても抜けません。ロック板バネを押してロックを外した状態で引き抜く必要あり。また一つの端子に電線1本の場合と電線2本が一つの端子に入っている場合とがある。)


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配線修正後。

青く見えるのは、テンプセンサ(温度スイッチ)です。
その端子の両端にネオンランプの配線(白線)がくるように修正。

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注水ランプの点灯確認のため、注水口を外し、内部の水分が抜けるようにする。

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しばらくすると、注水ライト(ランプ)が点灯。
今回の作動テストで、初めて点灯しました。
最初の電流検査でボイラヒーターの電流が0になったのは、この注水ライト(空焚きスイッチ)が作動して、ヒーターを自動的に切ったからだとわかりました。 (グリーンライトが点灯しなかったのは、水が少なかったので、蒸気圧力が高まらなかったため。)

今回の検査結果:注水ライトの不具合はあったものの、スチーム機能は問題ないです。

わかった構造の概要。
・ボイラのヒーターを制御(on/off)するのは、ボイラ内の圧力スイッチ。
圧力スイッチは、通常オン(短絡)でヒーターを作動させる。 ヒーターで水が熱せられ、発生した蒸気でボイラの内圧が上がると圧力スイッチがオフに作動。するとヒーターが切れ、圧力スイッチ間に生じた100Vでスチーム可(緑)ライトが初めて点灯。

この緑ランプ(ライト)が点灯しているときは、圧力が高いことを示し、ヒーターは切れている。 スチームを使用してボイラタンクの圧力が下がると、圧力スイッチが復帰し通常オン状態に戻る。 すると圧力スイッチの端子両端には100Vが生じなくなるので、スチーム可(緑)ライトは消える。同時にヒーターが再度発熱開始。 この繰り返しでボイラタンク内の圧力が一定の変化内に収まる。

・注水ランプは、ボイラ温度が上がると注水(空焚き)スイッチのバイメタルが作動しヒーターを切る。 するとスイッチ両端には100Vが生ずるので点灯。つまり 注水(温度)スイッチは、空焚きを検出するスイッチといえます。

・スチームバブルスイッチ(こて先のスイッチ)は、アイロンの電源を入れると作動。
つまり、コテは単体で使えるけれど、ボイラー単体では使えない。
ボイラーを使うときはコテの電源が必要。(ボイラーからの蒸気がコテで冷えてしまうと水滴が発生するため。)
 
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スチームボイラのヒーター回路

posted by 家庭用品修理士隊 at 11:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 修理改造相談
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